誰だって傷くらいあるでしょ
●自宅三昧2 (2004年7月19日) 
夏の珍事の起こりは、Bという青年による。青年Bはたぶんかなりの車好き。21歳の超若者だ。その晩、青年Bの運転するエアロ完全装着の旧型シルビアはパトカー2台に追われハイスピードでその軽いケツをふらして逃げまくっていた、らしい。所は壮年Aが住む杉並の住宅地。Bのシルビアは荻窪警察のサイレンと再三の停止命令に追われなから、よせばいいのに壮年Aの自宅近くのとっても平和な交差点に近付いていく。当然のごとくその時までは、壮年Aと青年Bの接点はまるでない、まるっきしあかの他人の面識無き間柄。
重要な問題はその数秒後に起きた。交差点を思いっきりアンダーにステアリングを切った後の青年Bは、ドリフトする後輪をもてあまし、よりによって、本当によりによって壮年Aの駐車場にその偶然のヘッドを向ける。駐車場には壮年Aがこよなく愛すBMWが日常的に静止しているのにである。
あとはチカラのベクトルが作用するままに事が進んだよう。BMWの右後方に当たって跳ね返ったBのシルビアは、向かいの家のブロック塀に突っ込んでその動きをようやく止めた。そして追って来たパトカー2台にあっけなくご用となる。幸いの事に、青年Bは無傷。こういう極めて珍しい、確率的にはかなり低い事故が壮年Aの誕生日の翌日の夜7時に起こった。Bは免停中だった。
Bの任意保険で全てが金銭的に解決していく。向かいの家のブロック塀も壮年AのBMWも保険で直る。でも加害者の青年Bがあまりにも誠意の表現を知らないようなので、壮年Aが電話で「顔くらい出せ」と言ったら、菓子折りを持って現れた。俳優でもやって行けそうなルックスのかっこいい長身の男だった。「すみません位は言えよ」と言ったら、すみませんと2回繰り返して最後に言った。
加害者がもってきた菓子を、被害者の壮年Aの妻と娘は冷蔵庫で冷やして美味しそうに食べる。それを見て、壮年A自身も美味しく頂く。これを期に壊れたBMWを手放して新しい車に乗り換えればいいのにと言われ「不具合があると逆に愛おしくなるしな〜」と答える壮年A。めったにない事だから夏のジャンボ宝くじ買ったらと言われ「そうかもね」などととぼけながら。
BMWは修理が終わっても、下取り時にはたぶん事故車扱い、しかもバランス崩れて真っすぐ走らなくなるかもしれない。でも正直いうとなんか怒りが湧いてこない。青年Bとも再会できたらその後の話でも聞いてみよう、なんて考えている。「それじゃ、やられっぱなしじゃない、お人良し。」に近い事を周囲は言うけれど、なんとなくそう感じない。退院してくるBMWが楽しみなだけ。もしかしたら若さへの嫉妬? なんて事を考えてもみたが。変なの。
     
所詮、天空の下だし
●関越自動車道三昧5 (2004年7月30日) 
夏盛りの時、あ〜明日から8月か〜、なんて渋滞してたら、おっと前の車にぶつかりそうになる。たくさんいっぱい情熱的になって今日を駆け巡るも、明日を立ち止まるも、所詮、蒼き蒼き空の下の出来事なんだよね。って毎度の足払いされたような気分。存在するんだけどしない、みんなからは見えない、聞こえない人間になってしまったっていいんじゃないの、もう? 透明人間、どおよ。存在しないから責任も発生しないし、成功も挫折もなし。
いまさら、水着に着替えて豊島園に並んだり、グランドキャニオンを背にトレッキングシューズと首タオルでピース、なんて夏の歳じゃないし、夏の悔い無き過ごし方を思い悩むのにも相当飽きたし、といって読書の秋を腹の底から切望する訳ではもちろんありません。大きな夢を見るために、小さな夢を忘れる努力がやっと実ったかのような若い顔をして飛行機に乗り込んじゃおうかな〜、真夏の東京を後に、冬のニュージーランド辺りを目指して。
気温の下降が不自然に曲げられた壮年Aの指向性を少しでもオプチマイズして、暑さでバラバラに解体された内臓と脳細胞を、ある部品はあそこ、ある部品はここ、というふうに整理され清掃される進行を目前の蒼き高き空の中の、遠き寒い南半球に想像する。雲は台風10号の煽りをうけて西から東へ飛んで動き、ようやく渋滞が終わって幹線道路に出た頃、夜空には正球の大月一つが浮かぶおそらく満月の2004年7月末日の土曜日。
最愛の娘、中学3年は一応の受験生。学年主任や塾長がリキを入れて言うには、秋からの2学期が勝負との事。そして2学期を制するにはこの夏が勝負らしい。ほんとかよ。娘も妻もその波に完璧に乗っている。その横でパソコンをカチャカチャたたいている壮年Aにとっては、どうみてもありきたりの普遍サマー。でも、Aだって勝負する事くらいの2〜3はあるし。この夏、Aも適当に見つくろって何か勝負してもいいんだけど、フロントガラスの前に広がる高い大空みちゃうとね・・・妙に天動説的になっちゃって。今日帰ったら誰かに聞いてみよう、夏の空は好き? って。(実際には聞かないけど)
     
かつてビルはビルであったの?
●競馬三昧1 (2004年8月7日)
壮年Aの競馬歴は長い。車歴よりも長い。Aの車歴は、16歳で原付とって、郵便局払い下げのHONDAカブを2000円で分けてもらい、19歳で普通免許とって、黄色の初代HONDAシビックの中古を入手した30数年前にもさかのぼる。結構長いでしょ。でも、それよりもずっとずっと前に勝馬投票券には馴染んでいた事実ありで。30年以上も競馬に遊ばれていると、人間、ろくな性質にならないけどね、たぶん。
実はAには、必勝法に限りなく近い、秘密の競馬持論があるらしい。馬券歴30年強の血の滲むような努力の積み重ねによって生まれたその秘策をもってすれば、なんなく穴馬券を手中する事ができる程の、まさに他人には口が裂けても言えねえ言えねえ秘法中の秘法なのだ。とはいっても、まあ、中穴狙いですが。もっと言うと、その秘法、何故か、中央競馬だと、小倉と中山、あとは地方競馬にしか効力がない、ちょっと変則な術なのだが。(なんでだろう、理由がわからない)
まあ、そんな事はどうでもいいのだけれど、とにかく壮年Aはその秘法をもって、先週も関東屈指の地方競馬の頂点、大井のガラス張り6Fゴンドラシートに大枚2000円払って、鉛筆なめなめ居座った訳で。
大井にも偉大な騎手は当然たくさんいらっしゃる。内田・的場なんかは周知の顔ですが、いるんですよね、渋い苦節男が。その名を早田と言う、大涙泣かせ男。最近の彼の成績はあまり良くはない。長いブランクもあってかお高い馬券師達にはあまり人気はないようだ。じゃあなんでそんなに囁かれるかというと、その理由の一つに、ある女性の影が。彼が乗るレースには必ず現れる女性一人。先週のような熱夜の日も、凍えるような冬の日も。彼の鞍をひっそりと一途にゴール脇で見据える、世界の中心で愛をさけぶような女性一人の存在です。彼女が現れると、大井の観覧席の中がざわめくのだ。彼女の出現は何年も続いているので、噂が噂を呼んで、今じゃ指定席組の常連達の伝説と化しているように。
その早田が、先週の水曜日、久々に大井の6Rと7Rを続けて勝利した。壮年Aも次の8R、久々に例の秘法で勝利した。Aのごひいき馬「ドントコイタカモト」に秘法のシグナルが点灯し2着。それを軸に流したのが正解でした。
帰りの愛車BMWの直6エンジンは先月の魔の入院などなかったかのように快調に回っているし、懐は少し暖かくなるし、小さなつかの間の幸せに酔い、騎手「早田」の事を考えながら帰途の首都高に乗る。早田が1着になって戻って来ても、彼女は手を振るような目立ったアクションは断じてしない。その姿勢は春夏秋冬一貫している。勝っても負けても、ただただ勝負師・早田を見つめる事に人生のかなりの時間を費やしているのである。うーん、これだけ愛されると男はどう対処するのだろうか。もしかして何か違う事情ではなかろうか。単にしつこい熱狂ファンや女ストーカーという可能性もアリか・・・・。でも勝負事にはロマンが似合うし、なんか最近忘れかけていた幸せ感が少し湧いたようなAのチンケ顔が室内ミラーに久々にきちんと写っていた、みたい。
     
鮮度もなく価格も少し高い、と妻は言っていたから
●日常三昧1 (2004年8月12日)
そういや、ある友人夫婦が「メイクラブなんて、うちはそれこそ、盆と正月だけですよ、ハハハ」なんていつだか言っていたな〜。という事は、今はその片方のお盆だから、今頃はどっかクーラーの効いたコジャレた部屋で青だかピンクのカクテル脇に、あの夫婦は公言どおりのメイクラブをしてるんだろう。あの英語のお得意のお二人の事だから、なにやらそれはそれはすごいメイクラブになっていそうですが。なんせラブをメイクする訳だし、フィールがソーしてグッド位は自然の流れでしょうし。なんてニタニタしているからいつまでも効率や向上とは縁のないただの壮年なんですよ、あなたは。と自身に向かってブツブツとのたまう壮年Aが少しは好き? なんて誰に聞いているの?。
ポルシェとBMWを女を捨てるがごとく躊躇なく捨て去って、王道メルセデスを奪取した別の友人が言うには、BMWとメルセデスは「全然違う」んだそうだ。全然ちがう、という事は、WindowsとMac位、男と女、ビートルズとストーンズ、100円と10万円、質量にして地球と月、美しさにして木村拓哉と壮年A、えーい、お買得スキンと豪華スキンレススキン位は違ってもらわないとやはり、全然違う、とは言えないのじゃないだろうか。クリネックスとセシール位じゃね。
鬼のような直進性、超がつく高速接地感、舐めるようなステアリングと完全同期の回頭性・・・ BMW人の集うお仲間サイトには当然のごとくBMWを賛美するたくさんのTXTがある。BMWが好きな人が集まっているのだから必然中の必然な訳で法律的にも道義的にも文句はない。ないんだけど、でも壮年Aの現行328も、以前乗っていた525も、正直の話、そこまではねー。時速180kmや200kmでは結構緊張をしいられるし・・・。日産ステーシアワゴンの時速180kmは恐くなかったし、もしかしてAが所有したBMWはたまたまハズレなのかもしれないけれど。
メルセデスを所有している数少ない友人に問うと、みなさん口を揃えて、「ラクだよ、まず疲れない。あんまり官能的ではないけどね」なんて言う。車でメイクラブする機会はもうこの先もなさそうだから別に官能的でなくても全然構わないし、車道(くるまどう)行き着く最終型は、やはりメルセデスなのかもしれない。なんて素直に友人達を喜ばせる性格にはちょっと遠いいが、でもきっと正解なんでしょうね。そういや、あの盆と正月の夫婦も正規メルセデス派だ。
でもね、壮年Aの心底の理想形態としては、メルセデスやBMWの機能や性能なんてハナから学ばないで、「私、白いメルセデスが好き」なんてホテルの部屋で軽く独り言のように死ぬまで呟いていたいのですが、この腹と顔じゃね、と思う。
     
| 戻る | 前のページ | 次のページ |